いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
介護現場には様々なマニュアルが存在します。それは公的介護保険という制度に基づいて行われているため、事業種別ごとに用意しなければいけないマニュアルが数多く存在するためです。
しかし、それらのマニュアルが必ずしも現場で活用されているかというとそうではありません。厚生労働省や都道府県・市町村が定めた基準を満たすためだけに作られた画一的なマニュアルは、実地指導をクリアするという目的は達成できるかもしれませんが、多くは使われないまま終わってしまいます。
事業所ごとに現場での運用方法も異なり、マニュアルは生きたマニュアルになっていないからです。現場で生きたマニュアルにするためには、現場の状況にあったマニュアルを作ることが必要とされています。
介護現場でマニュアルが活用されないことによる課題
介護現場でマニュアルが十分活用されないことで、どのような課題があるのか、解説します。
- 教育不足と混乱の増加:
現在の介護事業所におけるマニュアルの利用状況では、新人スタッフや他の従業員が業務を適切に理解できない可能性が高まります。これにより、業務の混乱や誤ったケアが増加し、介護の質が低下するリスクが存在します。 - 対応の遅れとリスク増加:
マニュアルの活用が不十分な場合、必要な情報の確認や制度の変化に迅速に対応できない可能性があります。これによって、介護事故のリスクや、信頼の低下、適切なケアが提供されない事例が生じるかもしれません。 - 教育コストの圧迫と業務遅延:
マニュアルが活用されていないため、教育を行う従業員は個別の質問や指導を求めて時間を費やすことが増えます。これにより、教育コストが増加し、本来の業務に時間がかかるため効率化が難しくなる可能性があります。
マニュアルが活用されないことで人材育成やサービスの質の低下、事故リスク増加、信頼の低下など様々な影響が出る恐れがあります。実地指導の為だけに作って、それ以降書棚の中にしまわれたままになっているマニュアルがこれらの課題を解決してくれることはありません。
介護現場におけるマニュアル活用のメリット
現場で生きたマニュアルを活用することでどんなメリットがあるでしょうか。主に以下のようなメリットが考えられます。
事故・トラブルの防止
マニュアルの導入により、業務上の事故やトラブルを予防できます。業務上の事故やトラブルの多くは、従業員の独断に起因しています。特に、手順が明確でなかったり、判断基準が不明確だったりする場合、従業員は「これで問題ないだろう」という慢心に陥り、思わぬ事故が発生する可能性があります。
一方で、対応方法や手順をマニュアル化することで、従業員はマニュアルの指針に従って業務を進めることができます。マニュアルに基づいた作業により、事故やトラブルを最小限に抑えることができます。また、万が一の事故やトラブルが発生した場合でも、従業員がマニュアル通りにケアを行っていたことが証明されれば、個人の過失を軽減する効果もあります。このように、利用者と従業員の双方を守るためにマニュアルは不可欠です。
生産性の向上
マニュアルの導入は、生産性の向上にも繋がります。日々の業務をシステム化することにより、従業員は業務の手順や進め方を意識することなく、効率的に業務を遂行できるようになります。この結果、従業員の負担が軽減され、余った時間を個別のケアに充てることができます。
さらに、マニュアルは新人の教育や個人の特定化の解消にも寄与します。詳細な説明が記載されたマニュアルがあれば、経験の浅いスタッフでも、同じケアを提供できるようになります。これにより、施設全体で一定のサービス品質を維持し、利用者の満足度を向上させることができます。
このように、現場に生きたマニュアルがあることで多くのメリットを享受することができます。
マニュアル作成時の注意点
マニュアル作成時には以下のポイントに注意することをお勧めします。
- 最初から完璧を求めない:
介護マニュアルには実行できない内容は含めないようにしましょう。マニュアルは業務遂行のルールとなるため、実際の現場で実行できないことが書かれていると、従業員にとっては参考にならないものとなります。最初から完璧なマニュアルを目指すのではなく、実行可能な内容から少しずつ内容を追加していくことをお勧めします。 - 読み手を意識した内容にする:
マニュアルは、読み手が誰であるかを考慮して内容を構築しましょう。業務経験やスキルに差があるため、誰が読んでも理解できるように記述することが重要です。自分の知識や技術だけを基準にして記載すると、理解できないマニュアルになる可能性があります。 - 情報は視覚的にまとめる:
文章だけのマニュアルは読みにくく、理解に時間がかかります。図や表を使用して情報を視覚的にまとめることで、読み手の理解を助けます。フローチャートやチェックリストなどを活用することで、作業漏れや手順ミスを防ぐことができます。動画を使用することも効果的です。
紙のマニュアルの課題
もうひとつ、大きな問題として、多くの介護現場では紙のマニュアルが使われていることがあげられます。紙のマニュアルを活用していることによる問題点を4点紹介します。
- 経済的な負担と環境への影響:
介護現場や介護サービス事業者にとって、大量のマニュアルを印刷して配布することは、経済的な負担と環境への影響が懸念される課題です。従来の紙ベースのマニュアルでは、印刷コストが増大し、用紙の消費量が急増します。さらに、マニュアルを更新するたびに印刷していてはさらにコストが増大します。これによって、必要な情報を提供するためにコストを割かざるを得なくなるだけでなく、無駄な印刷資材の使用が環境に対する負荷を高めています。 - 必要な情報の迅速なアクセスの難しさ:
介護の現場では、場面・場面において適切な情報への迅速なアクセスが求められます。しかし、厚くて重い紙のマニュアルを手でめくることは、迅速な情報アクセスを難しくする要因となることがあります。特に緊急時やストレスの大きな状況下で、手順やガイドラインを素早く見つけることが難しく、スタッフの効率性や利用者のケアに影響を及ぼす可能性があります。 - 最新情報の提供と更新の困難さ:
介護の業界は常に変化しており、新しいケア技術や制度の変更が頻繁に行われます。しかしながら、紙のマニュアルでは内容の変更や更新がある際に、再印刷や再配布が必要です。これにより、現場への最新情報の提供が難しくなり、古い情報を使用してしまうリスクが存在します。また、緊急のアップデートが必要な場合にも、手続きや配布に時間がかかるため、効果的なコミュニケーションと情報共有が難しくなる可能性があります。 - 保管と持ち運びやすさ:
マニュアルを取り出す際に書棚の場所まで移動しなければいけない、またはそれを現場に持ち出さなければいけないという問題があります。老人ホームなどの施設サービスであれば可能ですが、訪問介護や訪問看護、福祉用具、ケアマネジャーによる居宅介護支援などのサービスは利用者宅が現場です。重いマニュアルを持ち運ぶことや、それを常に保管しておくことは不可能です。サービス種別が訪問系サービスの場合は、その場で確認できるマニュアルが必要です。
電子マニュアルのメリット
マニュアルを紙のマニュアルから電子マニュアルに変更することで以下のようなメリットがあります。
- リアルタイムでの最新情報提供:
電子マニュアルは、介護現場における急速な変化に迅速に対応するための効果的な手段です。介護業界は常に最新の法律や規制、最適なケア技法が変化しており、これに合わせてマニュアルも更新される必要があります。電子マニュアルならば、新しいガイドラインや手順が導入された場合にも、その都度マニュアルを更新してリアルタイムで提供することができます。これにより、スタッフは最新情報に基づいて適切なケアを提供することができます。 - 迅速な情報アクセスと検索の容易さ:
介護の現場では、迅速な情報アクセスが非常に重要です。緊急事態や高ストレスな状況下で、特定の情報を素早く取得することは業務の効率性を大幅に向上させます。電子マニュアルは効率的な検索機能を提供し、キーワード検索や目次を活用して必要な情報に迅速にアクセスできます。スタッフはタブレットやスマートフォンを使ってその場で利用者と向き合いながら、必要な情報を瞬時に探すことができます。 - 複数のデバイスでの利用可能:
電子マニュアルは、様々なデバイスで利用できるため、スタッフは自身の使い慣れたデバイスを選択してマニュアルを閲覧できます。タブレットやスマートフォンを使ってベッドサイドや患者のそばで情報を確認することで、患者とのコミュニケーションを妨げることなく、適切なケアを提供することができます。また、デバイスを持ち運ぶことで、移動中や待ち時間にもマニュアルを活用できます。 - 効果的な更新と一元管理:
電子マニュアルは、内容の変更や更新が非常に容易です。介護現場では、新しい技術やケアの手順が導入されることがありますが、電子マニュアルならば即座に変更を反映させることができます。さらに、バージョン管理を通じて過去の情報もアクセス可能であり、ケアの過程や記録の追跡が容易です。また、電子マニュアルはマニュアル閲覧のデータを収集し、スタッフのマニュアル閲覧状況を把握することも可能です。これにより、必要なトレーニングや教育プログラムを効果的に計画し、スタッフのスキル向上をサポートします。
電子マニュアルは、介護現場において業務の効率化とサービス品質の向上を促進するためのツールと言えるでしょう。リアルタイムな情報提供や効率的な検索機能、複数デバイスでの利用可能性、効果的な更新・管理の側面から見ると、これからの介護現場において電子マニュアルは不可欠な存在となることが期待されます。
事例紹介
電子マニュアルの活用方法について事例を紹介します。
①訪問看護:慣れない機器を使用する場合
いまAさんのお宅に訪問しているんだけど、ちょっといい?
訪問診療の担当医から皮下点滴の指示が出たんだけど・・・、この前研修でやった新しい輸液ポンプ置いてあるの!まだこの機械、使ったことないんだけど、設定方法覚えてる?
あの先生よくあの機械使うよね。私もちょっと苦手で、説明難しいなぁ。
あ。そうだ!電子マニュアルに研修の時の動画と説明書載せてあるからそれ見てみれば?
あ。そうね!ありがとう!
今から開いてみる!
②訪問介護:利用者から質問されたとき
ヘルパーさん。今度爪切りをしてほしいんだけど、やってもらえる?
(ヘルパーって爪切りしていいんだっけ・・・)
ちょっと事務所に確認してみますね!
事務所、誰も電話に出ないし・・・どうしよう。。。
あ、マニュアルで介護保険でできないことのリストがあったはず!!!
・・・「爪に異常がある、爪の周囲の皮膚に化膿や炎症がある、糖尿病などに伴う専門的な管理が必要な爪の爪切り、爪やすり」はダメだけど、通常の爪切りだけだったらいいんだ。
制度上はできるんですけど、その場合、サービス内容が身体介護になります。単位数も変わるし、プランの変更が必要になるので、上司に報告してからケアマネさんに相談してみますね。
ありがとう!本当に助かるわ!
③福祉用具:重たいマニュアルを持たない福祉用具専門相談員
この前、歩行器レンタルした利用者Bさんなんですけど、やっぱりキャスター付きの歩行器がいいって言うんですね。商品変更したいんですけど、限度額ギリギリなので、単位数が収まればレンタルしたいんですけど、ありますか?
いつもありがとうございます。今日、カタログを持ってきてなくって・・・
いま電子マニュアルで確認しますね!(チャチャチャ!)
この歩行器とこの歩行器なら300単位で、ご本人の歩行状態ならお勧めですけれど、どうでしょうか?
いいですね!じゃあ今度デモで一緒に訪問しましょう。来週で都合のいい日ありますか?
社内マニュアルや社内ルールだけでなく、一元管理するオンラインストレージとして活用していくことも大いにメリットがあります。訪問系サービスだけでなく、多店舗運営している事業者は全店舗でマニュアルを統一・管理する上でもメリットがあります。
これらの事例から、電子マニュアルが介護現場の効率化や品質の向上に大いに役立つことがわかります。業務改善の一歩としてマニュアルを変えていくことはお勧めです。
介護事業者が電子マニュアルを選ぶなら
介護現場での電子マニュアル活用のメリットを紹介しました。
現在、様々な電子マニュアルツールが市場に出回っています。ただ、よく聞く声には以下のようなものがあります。
電子マニュアル選びも慎重に、必要な機能を考える必要がありますね。
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この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
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