この記事を監修したのは
介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
河北 美紀
ケアマネジャーは、利用者一人ひとりに合ったケアプランの作成を行うほか、利用者やご家族への相談・助言、サービスが適正に行われているかの見守りなど、介護全般の調整・マネジメントを行う重要な役割を担います。この記事では、ケアマネジャーについて詳しく知りたい方向けに、ケアマネジャーの役割や探し方、選び方のポイント、ケアマネジャーを変更すべき事例などについて解説しています。
★こんな人に読んでほしい!
- ケアマネジャーの役割や仕事内容について詳しく知りたい方
- ケアマネジャーの探し方や選び方がわからない方
- ケアマネジャーに相談できる内容が知りたい方
- ケアマネジャーとの付き合い方に悩んでいる方
★この記事で解説していること
- ケアマネジャーは、ケアプランの作成、要介護者やご家族への相談・助言、関係各所との連絡調整、介護サービスが適正に行われているかの見守りなどを行う
- ケアマネジャーは、地域包括支援センターからもらう居宅介護支援事業所のリストから探して契約をする方法が一般的であるが、入院中の場合は、病院の医療ソーシャルワーカーから紹介してもらえるケースもある
- 信頼できるケアマネジャーを見分けるポイントは、利用者への丁寧な説明をしてくれるか、知識や情報は豊富か、ケアプランを複数提案してくれるか、などである
- 相性が合わないと感じた場合はケアマネジャーを変更することができる
- ケアマネジャーに任せきりにするのではなく、意見や希望、困りごとや不安なことなどの些細なことも詳細かつ明確に伝えるようにしましょう
1. ケアマネジャーとは
1-1.ケアマネジャーは介護全般の調整・サポートをしてくれるスペシャリスト
ケアマネジャー(介護支援専門員)*1は介護全般のサポートを行う専門職で、要介護または要支援と認定された方の相談に応じ、心身の状況や環境に応じて適切な介護サービスを利用できるように市区町村・介護サービス事業者・施設などとの連絡調整を行います。
保健・医療・福祉分野の資格を持っており、実務経験が5年以上で、ケアマネジャー試験に合格するとケアマネジャーになることができます。介護福祉士や看護師・准看護師の資格を持っている方が多く、全体の約7割を占めています*2。
ケアマネジャーが保有している資格や職種*2
介護福祉士 看護師・准看護師 相談援助業務等従事者 社会福祉士 保健師 薬剤師 理学療法士 医師 など |
1-2.ケアマネジャーの役割・仕事内容
要介護認定で要支援や要介護と認定されても、それだけで介護サービスを利用することはできません。介護サービスを利用するには、ケアプラン(居宅サービス計画)を作成する必要があり、ケアプランに基づきサービスの利用がはじまります*3。
要支援と要介護ではケアプランを作成する人が異なります。要支援の場合は、地域包括支援センターの職員が担当します。要介護の場合は、在宅サービスもしくは施設サービスを利用するかで在籍先が変わりますが、ケアマネジャーがケアプランを作成します。
ケアプランについてはこちらの記事で詳しく説明していますので、ご覧ください。
ケアプランの作成は、ケアマネジャーの重要な仕事のひとつですが、ケアマネジャーの役割は、要介護者やそのご家族への相談・アドバイス、介護サービスが適正に行われているかの確認など、介護全般のサポートに及びます。
ケアマネジャーの主な役割・仕事内容
要介護認定に関するサポート | 要介護者やそのご家族への相談・アドバイス 要介護認定の申請手続き、更新手続きの代行 |
ケアマネジメント業務 | 利用者との面談(状況や必要なニーズの把握) 生活課題の分析 ケアプラン原案作成 サービス担当者会議の開催 ケアプランに基づくサービスのコーディネート モニタリング(実施状況と新たな課題の把握)ケアプランの作り直し |
給付管理 | サービスの保険点数と利用者の負担額を計算・管理し、保険給付に関する書類を市区町村に提出 |
その他 | 介護保険施設への入居連絡・調整サービスが適正に行われているか、サービス事業者との調整 |
ケアマネジャーの仕事内容について、詳しくはこちらに書いております。
2.ケアマネジャーはどこにいる?探し方や選び方のポイント
2-1.ケアマネジャーは居宅介護支援事業所や入居介護施設、地域包括支援センターなどに在籍している
ケアマネジャーは、主に居宅介護支援事業所や入居介護施設、地域包括支援センターなどの事業所に在籍しています*4。
居宅介護支援事業所*5
居宅介護支援事業所とは、要介護認定を受けた方が自宅で介護サービスなどを利用しながら自立した生活をするため、ケアプランの作成やサービス調整などの支援を行う事業所です。「自宅(居宅)」とされる住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の利用者にもケアプランの作成などを行っています。
入居介護施設*4
入居介護施設には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、認知症高齢者グループホーム、有料老人ホームなどの種類があります。
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護事業所
通い・泊まり・訪問のサービスを組み合わせた小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護事業所にも相談の機能があるため、ケアマネジャーが所属し、ケアプランの作成を行っています。
地域包括支援センター*6
地域住民の保健・医療の向上と福祉の増進を包括的に支援する市区町村の公的機関で、ケアマネジャー、社会福祉士、保健師などが在籍し、地域住民の介護に関する相談やケアマネジメントの支援などの業務を行っています。
要支援の方のケアプラン作成はこれまで予防支援の指定を受けた地域包括支援センターの管轄でした。ただ、地域包括支援センターの業務負担が大きく、それを軽減するため、2024年の制度改正により、居宅介護支援事業者(ケアマネジャーの事業所)でも直接利用者と契約して予防ケアプランの作成ができるようになりました。詳細は以下の記事で解説しています。
2-2.ケアマネジャーの探し方
ケアマネジャーの探し方には、主に2つの方法があります。
1.地域包括支援センターからの紹介
地域包括支援センターから、ケアマネジャーが所属している「居宅介護支援事業所」のリストを提供してもらい、そのリストから事業所に直接電話で連絡する方法です。
居宅介護支援事業所のリストは、地域包括支援センターのほか、市区町村の社会福祉協議会や介護保険課、高齢者福祉課などの各窓口で配布されています。
2.病院の医療ソーシャルワーカーからの紹介
入院中の場合、病院の医療ソーシャルワーカーに相談して紹介してもらえることもあります。
この2パターンが多いのですが、それ以外にも、近隣や友人からの口コミやインターネット検索で見つけるなど、様々なパターンがあります。
このサイト「いえケア」でもケアマネジャーの所属する居宅介護支援事業所を検索することが可能です。
2-3.失敗しない!ケアマネジャーの選び方ポイント
介護全般のサポートを行うケアマネジャーは、介護を行ううえで重要な存在です。ここでは、ケアマネジャーを選ぶポイントについて紹介します。
信頼できるケアマネジャーを見分けるポイント
利用者が納得できるよう介護サービスの良し悪し(メリット・デメリット)などをわかりやすく説明してくれる 多くの知識や情報をもっている 利用者や家族の意向をじっくりと聞いてケアプランを作成してくれる ケアプランや事業者を複数提案してくれる 現場の状況をよく理解している 他の利用者からの評判が良い、など |
介護福祉士や看護師、社会福祉士などの経験を経て、ケアマネジャーとなっている方もいるため、医療に重点を置きたければ看護師の資格をもつ方、身体介護や生活介護のサービスの必要性が高ければ介護福祉士の資格を持つ方など、必要な介護サービスの領域に強みや知識があるケアマネジャーを選ぶとよいでしょう。
高い要介護度への積極的な対応や、専門性の高い人材で質の高い介護サービスを提供しているなどの条件を満たす事業所には、「特定事業所加算」が適用されます。特定事業所加算の適用を受けた事業所のケアマネジャーを選ぶのもひとつの方法です。
ケアマネジャーが決まると、ケアマネジャーは要介護者の自宅を訪問し、ケアプラン作成のための面談を行います。その際は必ず家族も同席し、わかりやすく説明してくれるか、知識や情報が豊富か、など上記で紹介したようなポイントを判断すると良いでしょう。
現在はケアマネジャーの人手不足が深刻化していますので、自由に選択することができない状況も生まれています。ケアマネジャーとすぐに契約できない場合もありますので、そんな場合にはこちらの記事を参考にしてください。
3.ケアマネジャーは変更することが可能
ケアマネジャー選びは難しく、実際にケアマネジャーと相性が悪く、トラブルとなってしまうケースもあります。しかし、ケアプランが作成されないと介護サービスを利用できないため、ケアマネジャー選びに必要以上に時間をかける必要はありません。
相性が合わない場合は、ケアマネジャーを後から変更することもできるため、必要な介護をすぐに受けられるような体制を作ることを優先させましょう。
ケアマネジャーや事業所の変更を検討すべき事例
家族の話に耳を傾けない 要介護者本人が嫌がっている 電話連絡がなかなかつかない 別の事業所のサービスを希望しているのに、自分の法人併設事業所のサービスを一方的に利用させようとしてくる 不必要なサービスを入れられ限度額で収まらなくなる、など |
同じ事業所内に複数のケアマネジャーがいる場合は、他のケアマネジャーに変更することができます。また、事業所自体を変更することも可能です。
ケアマネジャーを変更する場合は、所属の事業所に変更の希望を伝えましょう。事業所自体を変更したい場合は、新たな事業所にケアマネジャーを変更したい旨を伝えれば、手続きを進めてくれることもあります。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
4.ケアマネジャーとの上手な付き合い方
ケアマネジャーとの信頼関係を築くことは介護を行ううえでとても重要です。ケアマネジャーに任せきりにするのではなく、面談には必ず同席し、要介護者の状況や必要なサービス、介護をするご家族の意見や希望、事情を詳細に伝えるようにしましょう。
介護費用の月々の予算や、要介護者との同居への考え、介護と仕事の両立などの重要な事情も、話せる範囲でいいので、明確に伝えることが重要です。ケアマネジャーには守秘義務があるため、介護に関する困りごとや不安なことなど些細なことも安心して相談しましょう。スムーズに連絡がとれるよう、電話以外にもメールなど連絡が取れる手段を確保しておくこともおすすめします。
2024年の制度改定により、ビデオ通話などを使ってのオンラインモニタリングも認められるようになりました。こういったツールを使ってのコミュニケーションを希望する方はオンラインモニタリングに対応しているか相談してみましょう。
また、ケアマネジャーの提案が希望に合わないと感じた場合にも、一方的に希望を押し通すのではなく、どのような考えでそのような提案がなされたのか、介護の専門家であるケアマネジャーの意見にも耳を傾けることも時には必要です。
多くの要介護高齢者の事例を検討してきたケアマネジャーは、その後に起こりうるリスクやデメリットなども想定した上で総合的に提案している場合も多いのです。利用者・家族・ケアマネジャーがそれぞれの意見をすり合わせて、対話の中からより良い方向性を導ける関係を持つことが大切です。
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