いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
遠距離介護をするうえで、「どのくらいの頻度で帰省すればいいのだろう?」と悩むことはありませんか?
親の健康や介護の必要性を考えれば帰省を増やしたくなりますが、交通費や時間、仕事への影響など、さまざまな現実的な負担が伴います。
本記事では、帰省頻度に悩む方が無理なく介護を続けるための具体的なステップと工夫をご紹介します。親も自分も安心して過ごせる仕組みを一緒に考えていきましょう。
【この記事を読んでほしい人】
- 遠距離介護をしているが、どのくらいの頻度で帰省すれば良いか分からない方
- 帰省の負担が大きくなり、仕事や生活との両立が難しいと感じている方
- これから遠距離介護を始めるにあたり、具体的な準備や工夫を知りたい方
【この記事でお伝えしていること】
- 親と自分の負担を軽減するために、無理のない帰省頻度を設定する方法
- 地域サービスやテクノロジーを活用して帰省頻度を減らす具体的な工夫
- 帰省頻度を調整しつつ、親と自分双方が安心できる仕組み作りのポイント
1. 遠距離介護の帰省頻度に悩む方へ
帰省頻度の実態:アンケート結果から見る現状
実際、どのくらいの頻度で帰省する人が多いのでしょうか。
有料老人ホーム検索サイト「ケアスル介護」の行ったアンケートによると、遠距離介護の方の帰省頻度、最も多いのは週1~3回で、9割以上が月に一回は介護のために帰省していることがわかります。
「遠距離介護」と回答された方に介護のための帰省頻度を質問すると、「週1~3回程度」が約47%で最も多く、全体の9割以上が、最低でも月に1回以上は介護のために帰省していることが判明しました。
え?そんなに帰省しなきゃいけないの・・・?
実家まで往復するだけですごい時間もかかるし、ガソリン代も高いし。そんな頻繫に実家に帰ることなんてできないよ!
アンケートでは頻繁に規制をしている実態がわかりますが、親の介護度や生活環境により、その頻度にはばらつきがあるのが実情です。
実際のところ、遠距離介護といっても、遠距離ではなく、近距離介護・中距離介護と呼ばれるような比較的近隣市町村に住んでいる場合もあります。このアンケートでも、遠距離介護と回答された方の中で最も多かった移動時間は1時間未満でしたので、比較的近くに住んでいらっしゃるご家族が多かったものと思われます。
やはり距離が遠くなれば遠くなるほど、御家族にとっての時間的・金銭的な負担も大きくなります。それでは何を基準に帰省したらいいのでしょうか。
親と自分、双方の負担を考慮する
帰省頻度を決める際には、親の健康状態や希望を尊重することが大切です。しかし、それと同時に、自分自身の負担も無視してはいけません。在宅介護の期間が数カ月であれば負担にはならないかもしれません。ただ、在宅介護は長期化する可能性もあります。
遠距離介護が長期化することを見越し、無理のない頻度を設定しましょう。介護の体制が定まり、ある程度スムーズにサービスなども流れ始めたら、訪問の頻度を減らすなど、メリハリをつけていくことも大事です。負担のない頻度で帰省することが、親も介護者も幸せに暮らすための鍵となります。
よくある悩み:読者の声
- 「母が頻繁に帰ってきて欲しいと言いますが、仕事が忙しくて月1回が限界です。」(40代・女性)
- 「介護のために帰省するたびに交通費がかさみ、家計が厳しいです。」(50代・男性)
こうした悩みを解消するためには、帰省頻度の見直しと、現実的な工夫が必要です。親と介護者双方の負担を軽減する具体策をご紹介します。
2. 帰省頻度が高くなりすぎてしまう典型的なパターン
1. 家族間の役割分担が曖昧な場合
- 事例:全てを遠距離介護者が抱える状況
- Aさん(50代・女性)は、遠方に住む母親の介護を一人で担っています。地元に他の親族がいないため、日常的な用事から病院の付き添い、掃除など全てを一人で引き受けています。その結果、仕事を調整しながら毎月3回以上帰省。体力的にも精神的にも限界を迎えています。
- 問題点
- 介護の負担がAさん一人に集中している。
- 親族間の協力が得られず、孤立しやすい。
- 解決策
- 家族会議で役割分担を話し合う
- 他の親族にも協力してもらえることがないか、ひとりだけが負担を背負うことが内容具体的に分担を決めましょう。
- ケアマネジャーを交えて支援体制を再構築
- 専門職の客観的な視点が状況を整理する助けになります。病院の付き添いや掃除など、日常的に必要になる支援は介護保険外も含めたサービスで対応できる可能性もあります。
- 家族会議で役割分担を話し合う
2. 親が頻繁な帰省を当然視する場合
- 事例:親から過剰な期待を受けるケース
- Bさん(50代・男性)は、母親から「毎週帰省してほしい」と頼まれています。親は気軽な依頼(電球交換や郵便物整理)もBさんに頼んでしまう。Bさんも、一人暮らしをさせていることの申し訳なさや罪悪感からその要望に応えてしまう。しかし、頻繁な帰省が続き、仕事にも影響が出始めている。
- 問題点
- 親が「頻繁に会いたい」という気持ちから、現実的な頻度を理解できていない。
- 介護者側に罪悪感が生じ、負担を抱え込む。
- 解決策
- 帰省頻度をスケジュール化し、親と合意を取る
- 「月1回第2土曜日に帰る」といった明確な予定を提示。
- 地域サービスを活用して日常的なサポートを補完
- 配食サービスや買い物代行、地域の有償ボランティアなど、介護保険外サービスも含めて親が自立できる環境を整える。
- 帰省頻度をスケジュール化し、親と合意を取る
3. 緊急対応が頻発する場合
- 事例:親の体調不良や突発的な問題への対応
- Cさん(60代・女性)の義父は持病があり、些細な体調不良でも「すぐ来て欲しい」と連絡。認知症もあることから、「嫁が最近全然顔を出さない」と親族に電話をかけて愚痴ばかりこぼしているため、親族の間でも肩身が狭い。新幹線で駆けつける生活が続き、交通費が家計を圧迫している。
- 問題点
- 緊急時対応が頻繁になることで、心身や経済的負担が大きくなる。
- 親族との人間関係などにも悩み、大きなストレスを抱えている。
- 解決策
- 定期的な訪問看護やデイサービスを導入
- 健康状態を安定させ、緊急事態を予防。
- 親族で状況を共有しあい、協力体制を作る
- 認知症が進行していることなど、現在の状況を親族にも説明し、理解を得る。可能な範囲で協力してもらえる体制を作る。
- 定期的な訪問看護やデイサービスを導入
様々なケースもあります。帰省頻度が多くなってしまう理由は様々ありますが、家族の中での責任感や罪悪感などが帰省頻度を増やす要因の一つになることが多いです。しかし、無理をしてしまうとあなた自身やあなたの大切な家族の未来にも影響します。まずは無理のない帰省頻度を設定することが大事です。
3. 帰省頻度を無理なく設定するためのステップ
ステップ1:親との話し合いの場を設ける
帰省頻度を決める際に、最も大切なのは親の希望をしっかり聞くことです。ただし、親の要望を全てそのまま受け入れるのではなく、「現実的な頻度」とのギャップを埋める話し合いを行いましょう。
- 話し合いのポイント
- 親の希望を具体的に聞き出す。何回来てほしいか、ではなく、どんなことで困っているかを明確にする。
- こちらの事情についても説明し、理解してもらう。
- 明確なスケジュールを提示する。
- 無理なく続けられるラインを設定する。
ステップ2:家族・親族との協力体制を整える
帰省頻度の負担を軽減するためには、家族や親族との役割分担が不可欠です。一人で全てを抱え込むことを避けるために、定期的な家族会議を開きましょう。
- 具体的な方法
- 正月やお盆休みなどの集まりやすい時期を利用する。集まれないときはLINE電話やzoomなどを活用する。
- それぞれの役割を明確化する。
- 親族との情報共有を定期的に行う。LINEグループなどを活用する。
ステップ3:介護サービスを活用する
遠距離介護では、自分だけでなく外部の力を頼ることが大切です。介護保険や民間サービスを利用することで、帰省頻度を抑えながら親の安心感を維持できます。どのようなサービスが利用できるか、ケアマネジャーと相談し、サービス内容や費用を確認しましょう。
- 主なサービス例
- 訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの介護保険サービス。
- 配食サービス、買物代行、有償ボランティアなど。
- 見守りカメラ、警備会社の見守りサービス。
負担を軽減するための方法は他にもいろいろあります。帰省のための交通費を助成する制度などもありますので、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
4. 実例で学ぶ成功事例
実例1: 地域サービスと家族の協力で負担を軽減
背景: 母親(要介護2)の介護で月3回帰省していたDさん。母親から頻繁に電話もあり、困りごとを相談され、仕方なく帰省をしていた。最近は仕事も忙しくなり、頻繁な規制が負担になっていたことからケアマネジャーと相談をし、現在のケア体制の見直しを行うことに。
解決策: ケアマネジャーとの相談の結果、配食サービスやデイサービスを導入することに。サービス担当者会議と家族会議を行うことで、役割分担を調整。本人はデイサービスの利用に、最初は気乗りしないようだったが、実際に体験をしてみて印象が変わったと前向きに。
結果: 帰省頻度を月1回に削減し、負担軽減に成功。本人もデイサービスを気に入り、デイサービスの回数を増やしたいというほどに。デイサービスが楽しみになり、Dさんの帰省を待ち望むことも少なくなった。
実例2: テクノロジーの活用で帰省頻度を調整
背景: 父親(軽度認知症)の生活を見守るため月2回帰省していたEさん。近隣の住民からも心配の声があり、できるだけ頻繁に通うようにしていたが、遠方まで車で運転して帰省することが苦痛に。長距離運転中に事故になりかけたことで訪問頻度の見直しを決める。
解決策: ケアマネジャー・地域包括支援センターと相談し、民間警備会社が提供している見守りカメラつきの緊急通報システムを導入。異常があれば警備会社のスタッフがかけつけサポートを行うオプションも契約。警備会社の契約している看護師に相談することもでき、父親の安心にもつながる。
結果: 帰省頻度を月2回から2カ月に1回に減らし、離れている時間が多くても安心感を維持できるようになる。
カメラやセンサーでスマートフォンから見守りができるサービスもあります。ホームセキュリティでなくても、このような見守り機器であれば離れて暮らしていても本人の様子を時系列で確認することもできるので安心です。
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このように、サービスの調整やテクノロジーの活用、親族や近隣の協力などにより、帰省の頻度を減らし、無理のない介護体制を作ることができます。
5. 親も自分も幸せになる帰省頻度の決め方
訪問頻度の決め方はその家庭それぞれの事情によって異なります。なので、要介護度がいくつだから月に何回訪問すべきとか、距離は何キロ離れているから月何回訪問すべきとか、そういった目安はありません。基準はそれぞれの家庭で決めます。
適切な頻度を決めるために、自分がやらなくてもいいこと、誰かにお願いできること、などを分けていくことが必要です。自分じゃなければいけないこと、家族じゃなければできないことが明確になれば、自ずと訪問頻度も見えてくるでしょう。
具体的なヒントとして4つのポイントを紹介します。
1. 親と自分の「現実的なライン」を設定する
帰省頻度を無理なく続けるためには、親の希望と自分の生活スタイルをすり合わせることが重要です。親の希望がどうあれ、これまでの経緯がどうあれ、断言した方がいいです。帰省できる頻度はどのくらいまでと伝えましょう。
いろいろな思いもあると思います。親子ですから。
いろんな思いもあると思います。でも、それはそれ。
冷たいように聞こえるかもしれませんが、「無理なものは無理」と言うことも必要です。最優先でしなければいけないのは介護の体制を作っていくことです。家族が介入しなくても解決できることを増やしていくことを意識しましょう。
「無理なく続けられる」を基準にする
過度な頻度は介護者自身の生活を圧迫するため、親と自分双方が納得できるラインを見つけることが鍵となります。3年先・5年先まで同じ頻度で訪問することができるか。何度も言うようですが、在宅介護は長期戦です。長期的な視野も含めて計画を立てましょう。
知り合いの誰さんは毎日顔を出しているとか、あそこの嫁は本当に気が利くからすぐに駆け付けてくれているとか、そんな話をされることもあるかもしれません。でも、他人は他人です。事情が異なるので、他の家と比較して訪問頻度を決めることは避けましょう。
2. 帰省の目的を明確にする
帰省を効率的に行うためには、帰省する目的を明確にすることが大切です。ただ何となく訪問する、顔を見るために訪問する、顔を見ないと心配だから訪問する、というのはできるだけ避けましょう。
- 優先順位リストを作成
- 訪問回数を少なくするとしても、「サービス利用開始などの契約の立会い」「重要性の高い検査や医師からの説明の立会」「成年後見制度の手続き」「訪問診療開始に関する医師との面談」など、重要性が高く、誰かが立ち会わなければいけない重大な場面もあります。重要度の高い場面には帰省するように優先順位をつけておくようにしましょう。
ただ、必ずしも自分一人で解決する必要はありません。今回は都合が悪くて無理、と言う場合には他の家族に代わってもらうなど、無理のない方法を検討しましょう。 - ヘルパーさんにお願いできないことも多いです。なので、帰省が負担にならない範囲で、買物や大掃除、必要な書類の手続きなどの対応をしましょう。移動の距離や費用、負担感などを考慮し、できる範囲で帰省します。できない場合は、ケアマネジャーさんや地域包括支援センターとも相談して、介護保険外サービスなどを紹介してもらうといいでしょう。
- 訪問回数を少なくするとしても、「サービス利用開始などの契約の立会い」「重要性の高い検査や医師からの説明の立会」「成年後見制度の手続き」「訪問診療開始に関する医師との面談」など、重要性が高く、誰かが立ち会わなければいけない重大な場面もあります。重要度の高い場面には帰省するように優先順位をつけておくようにしましょう。
- 曖昧な目的を避ける
- 明確な目的があれば、帰省の頻度と内容がある程度固定化できるはずです。
話が聞きたい、不安だ、孫に会いたい、など要望はいろいろあると思いますが、それをすべてかなえようと思うと必ず限界が来ます。本人が認知症の場合はなおさらです。なので、明確に目的を決め、「今日はこれをしに来た」と本人に伝えることも重要です。
- 明確な目的があれば、帰省の頻度と内容がある程度固定化できるはずです。
3. 地域サービスやテクノロジーを活用する
自分だけですべてを抱え込む必要はありません。地域サービスや最新のテクノロジーを積極的に活用しましょう。
- 活用例:
- 介護保険外サービスとして、配食サービスやハウスクリーニング、便利屋など、介護保険では対応できない生活のサポートをお願いする。
- 見守りカメラやセンサーなど、生活状況が把握できるテクノロジーを導入することで双方の安心につながる。
- 民間警備会社の緊急通報サービスを契約して緊急時の対応ができる体制をとる。
- 地域包括支援センターへの相談
- 地域ごとに様々な社会資源があります。地域には様々なボランティア団体やNPO法人が活動しています。困りごとを解決するための地域の団体などを紹介してもらえる場合もあります。地域ごとの支援体制を確認し、今の状況に合ったサービスを探しましょう。
4. 情報を共有し、一人で抱え込まない介護体制に
親の健康状態や家庭環境は時間とともに変化します。そのため、離れて暮らす親族間で情報を共有することは難しいです。また、訪問したその日の状態しか見ていないので、その時にたまたま体調が悪いことで、何でこんな状態になってしまったの?と驚くようなこともあります。親族間では情報を共有しておくことがいいでしょう。
- LINEなどのグループチャット
- 状況把握のために、LINEなどのグループチャットを使うといいでしょう。こんな状況だった、こんなことがあった、ヘルパーさんからのメモにこんなことが書いてあった、などの情報を共有しておくといいでしょう。
- 親族だけをメンバーにするのではなく、別グループを作って近所で本人と特に親しくしている方などからの情報も受け取れるようにするのもいいでしょう。
- お願いしたいことなども普段からやりとりしておけば、自分一人ですべてを担わなくても大丈夫です。「扉の調子がガタついてるから、今度行くときに見てよ」「テレビの調子が悪いんだけど、ちょっと見てくれない?」など、親族それぞれに得意な分野でお願いできることがあればお願いしておくといいでしょう。
- 情報共有ができていればいざというときにも
- いつも大事な通院の付き添いや契約などをしていた親族がどうしても都合が悪くて立ち会えない、ということがあっても、情報共有が普段からできていれば安心です。別の親族が代わりに対応しても、最新の情報がわかるので、スムーズに対応できます。一人だけで抱え込むことがなくなります。
- また、情報を共有しておくと同時に、親族間で合意を形成しながら物事を進めていくことができるので、いざ何かトラブルが起きたときにも、誰か一人が責任を背負うということが少なくなります。情報共有は自分の身を守るためにも有効な手段となります。
遠距離介護の訪問頻度を決める方法のヒントを紹介しました。
まとめ:帰省頻度は無理なく現実的に決めることが鍵
帰省頻度の設定は、親の生活を守りつつ、介護者自身の生活を大切にする視点も重要です。頻回な訪問・帰省は介護者にとって大きな経済的・精神的・肉体的負担につながります。適切な頻度を見極めることも重要です。
- 親との話し合いで、現実的な頻度をすり合わせる。
- 地域のサービスやテクノロジーを活用して負担を軽減する。
- 定期的な見直しで、親の状況に合わせた柔軟な対応を行う。
遠距離介護は決して一人で抱え込む必要はありません。親も自分も安心して過ごせる仕組みを構築してください。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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